『菊は雪』は、佐藤文香の第三句集。

山吹や鳥の胸毛のやはらかく
雨は葉に落ちて繋がる夏はすぐに
葉桜の枝や水面を破り伸ぶ
秋近し声はあぶくとして伝はる
風船に角なき息のめぐりける
雪の斜面に我がじぐざぐをイメージす
洋梨を剝く手が洋梨とまざる
湯沸かせば湯に香りある鰆かな
つき指の痛みのとほる夜の桜
パターンで書ける俳句や敗戦日
生き物に逢ひたく思う雪の丘
串持てばあぶら滴る葱間かな
こゑに意味ついてくるなり雲丹ごはん
手札見せ尽くして秋の胡蝶かな